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連載小説 傍屋3

「枝豆追加お願いします」

   香は店主に注文した。まだ千嘉の話が終わりそうになかったからだ。

  「あーあ、誰かいい人いないかなあ…」

   千嘉がつぶやき、ビールをぐいと飲む。

   追加した枝豆が運ばれてくると、再び沈黙が二人を包む。

  香は以前付き合った彼氏のことを思い返す。

  彼はつまみ食いが好きで、極端な飽き性だった。

  香もまた、他の彼女たちと同様に枝豆の殻のように捨てられた。

「枝豆野郎に引っかかるよりは、全然いいよ…まあお互い焦るけどさ」  

 香も残りのビールを飲み干し、割り勘で勘定を済ませる。

  千嘉は流れ星が見えたと思ったのか、

 「傍屋の蕎麦みたいな男が見つかりますよーに!」

 と夜の星に向かって叫んだ。

  「ちょっと千嘉!声大きいって」マンションへの帰り道で陽気に叫ぶ千嘉の口を慌てて香は押さえた。恥ずかしいことこの上ない。まったく。

  二人はときどきふらつきながら、マンションへとたどり着き、お互いの部屋へと姿を消した。 (4につづく)